スイス国立銀行(SNB)は10月1日の会合で、政策金利を0%に据え置きました。ECB、FRB、日銀が利上げに動くなかで、あえて動かない選択です。ただし市場は「いずれ利上げに追い込まれる」と見ており、12月会合で利上げか据え置きかの確率はほぼ五分五分です。フラン相場と欧州金利の先行きを見るうえで、重要な節目になります。
何が起きたのか
SNBは10月1日(木)、政策金利を0%のまま据え置くと決めました。ECB、FRB、日銀はいずれも、物価上昇を抑えるために利上げを始めています。カナダや英国の中央銀行も、年内に追随すると見込まれています。スイスはこの流れから外れた形です。
背景には、スイス経済の物価が比較的落ち着いていることがあります。8月の消費者物価の上昇率は前年比0.8%でした。ガソリン、軽油、暖房用の燃料費が上がり、前月より少し伸びましたが、米国、英国、ユーロ圏の水準とは大きな開きがあります。ECBなどの物価目標は2%です。SNBは「0〜2%の範囲」を物価安定と定義しており、現在の物価は枠の中に収まっています。
SNBの見通しでは、物価上昇率は10〜12月期にもう少し上がったあと、2027年にかけて再び下がります。エネルギー価格の高騰が、今後の数四半期で和らぐとの想定です。年間平均の上昇率は2026年が0.7%、2027年と2028年がそれぞれ0.8%と予測されています。
マルティン・シュレーゲル総裁は、不確実性が非常に高いと述べました。フランが最近弱くなっている点にも触れています。3月にはイランでの戦争が始まり、安全資産としてフランに資金が流れ込みました。当時SNBは、為替介入に積極的になると表明しています。総裁は、今はフランが弱含んでいて状況は違うが、必要なら介入する意思は変わらないと説明しました。他国の利上げをどう見るかを問われると「われわれはスイスのために金融政策を決める」と答えました。そのうえで、スイスは小さな開放経済なので、海外の動きは判断に必ず織り込むとも語っています。0%の水準は「現時点では適切」というのが総裁の評価です。
要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決定内容 | 政策金利を0%で据え置き(2026年10月1日) |
| 直近の物価 | 消費者物価は前年比0.8%上昇(2026年8月) |
| SNBの物価見通し | 年平均で2026年0.7%、2027年0.8%、2028年0.8% |
| 市場の織り込み | 12月の利上げ確率は約5割。2027年初めまでに利上げ開始の確率は9割超。2027年9月までに政策金利0.75%以上を想定(ロンドン証券取引所グループのデータ) |
| フランの動き | 2025年はドルに対して12%超上昇。今年はドルが約4%取り戻した |
なぜ重要なのか・市場への影響
0%という低い金利を維持できる最大の理由は、フランの強さです。フランは世界的な不安が高まると買われる「安全資産」です。通貨が強くなると輸入品が安くなり、物価が押し下げられます。輸入への依存度が高いスイスでは、この効果が大きく出ます。
逆にフランが弱くなると、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力が強まります。ユービーエスのエコノミストは、前回6月の会合から、フランがユーロに対して2%超、ドルに対して1%超下落したと指摘しました。エネルギー価格の高止まりや米国・ユーロ圏の底堅い景気も加わり、利上げ開始が従来予想の2027年6月より早まる可能性があるとの見方です。ただし、物価が今後12〜18か月で2%を超える可能性は低いとも見ています。
為替市場への波及を整理すると、次のようになります。
- フラン: 利上げ観測が強まればフラン高の材料になります。一方で、SNBが介入をちらつかせるため、急激な上昇には歯止めがかかりやすい構図です。
- 金利: スイスは主要国で最も金利が低い国の一つです。利上げが近づけば、他国との金利差の縮小が意識されます。
- 株式・商品: 低金利が続けば、スイス株には追い風です。ただしフラン高は輸出企業の収益を圧迫します。
通貨ペア・市場別の見方
- ドルフラン: 2025年にドルは大きく売られ、今年はその約4%を取り戻しました。SNBの利上げ観測が強まれば、フランが買い戻されドルフランが重くなる場面も想定されます。米国の物価と雇用の指標とあわせて見る必要があります。
- ユーロフラン: フランは前回会合以降、ユーロに対して2%超下がりました。ECBの利上げ姿勢とSNBの据え置きという方向の違いが、そのまま価格に出やすい通貨ペアです。
- フラン円: 日銀も利上げを進めているため、金利差の変化は読みにくい組み合わせです。リスク回避の局面では、フランと円がともに買われやすい点に注意が必要です。
- 共通の前提: 地政学リスクが再燃すると、フランに安全資産としての買いが入ります。その場合はSNBが介入に動く可能性もあり、値動きが急になるおそれがあります。ストップ注文の幅や、ポジションの大きさには余裕を持たせたいところです。
今後の注目点
- 12月のSNB会合で、利上げか据え置きか(現時点では確率は約5割)
- スイスの消費者物価。特にエネルギー関連の動きと、10〜12月期の上昇幅
- SNBの為替介入に関する発言や、実際の介入の有無
- ECB、FRB、日銀の次回会合での金融政策の方向
- 原油価格と中東情勢。エネルギー価格の変動が物価見通しを左右します
- ユービーエスなど大手金融機関による利上げ時期の見通しの修正
よくある質問
Q. なぜスイスは他国と違って利上げしないのですか?
物価上昇率が0.8%と低く、SNBの目標範囲である0〜2%に収まっているためです。フランの強さが輸入物価を下げる効果もあり、急いで金利を引き上げる必要がありません。
Q. 利上げはいつ頃になると見られていますか?
市場は12月会合の利上げ確率を約5割と見ています。2027年初めまでに始まる確率は9割超です。ただし、これは市場の織り込みであり、SNBが約束した予定ではありません。
Q. フランが弱くなっていることは、利上げに影響しますか?
影響します。フラン安は輸入物価を押し上げ、物価上昇を加速させる可能性があるためです。ユービーエスも、フラン安が利上げ時期を早める要因になり得ると分析しています。ただし、最終的な判断は今後の物価の実績次第です。
出典: CNBC Economy(海外発の公開情報を編集部が翻訳・解説)
※本記事は海外の公開情報をもとにマネチャ編集部が翻訳・要約・解説したものです。特定の取引や投資を推奨するものではなく、投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。相場・経済情勢は常に変動し、情報が後に修正される場合があります。