米国の9月の住宅指標が軒並み市場予想を大きく下回り、中古住宅の成約待ち件数を示す指数は2001年の統計開始以来の最低となりました。一方で卸売物価は加速しており、FRBは景気減速とインフレ再燃のはざまで難しい判断を迫られています。住宅の冷え込みは利下げの根拠になりにくく、高金利の長期化がドルや米長期金利を支える反面、株式などリスク資産には重しとなる可能性があります。
何が起きたのか
現地20日(火)、9月分の住宅関連統計が相次いで発表されました。全米不動産業者協会によると、売買契約は結んだものの引き渡しが済んでいない住宅の件数を示す「中古住宅販売成約指数」は前月比7.3%低下し、前年同月比では11.3%低下しました。市場予想は前月比0.4%低下にとどまっており、悪化幅は予想を大幅に上回りました。水準は2001年に遡る統計で過去最低です。先行指標のため、今後数か月の中古住宅販売が弱くなることを示唆します。
商務省が発表した住宅着工件数(季節調整済み年率)も前月比5.2%減と、予想の0.4%減を大きく下回りました。着工の先行指標である建築許可件数は0.2%減で、予想は2%増でした。一戸建ての許可件数は84万5000件にとどまり、8月から4%減少して2023年以来の低水準です。住宅建設業者の景況感も14年ぶりの低さにあります。
背景にあるのは住宅ローン金利の急上昇です。モーゲージ・ニュース・デイリーによると、30年固定ローン金利は9月の大半で7%を超え、月末には7.6%前後でした。記事では直近の水準を7.43%とも紹介しており、調査時点の違いによる差とみられます。5年前は3%近辺で、コロナ禍の住宅ブームを支えた超低金利から様変わりしました。全米不動産業者協会のローレンス・ユン主任エコノミストは、雇用や所得の伸びが購入を支える面はあるものの、住宅の買いやすさはローン金利の変動に最も左右されると指摘しています。
フォワードボンズのクリス・ルプキー主席エコノミストは、政策が大きく転換しない限り住宅市場は深い眠りに入ると警告しました。ゴールドマン・サックスのロニー・ウォーカー氏は、2027年にかけて買いやすさの悪化が活動をさらに押し下げるとの見方を顧客向けに示しています。
要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 中古住宅販売成約指数(9月) | 前月比7.3%低下、前年同月比11.3%低下。2001年以降で最低(予想は0.4%低下) |
| 住宅着工件数(9月) | 前月比5.2%減(予想は0.4%減)。建築許可は0.2%減(予想は2%増) |
| 一戸建て許可件数(9月) | 84万5000件。前月比4%減で2023年以来の低水準 |
| 住宅ローン金利(30年固定) | 9月の大半で7%超、月末は7.6%前後。5年前は3%近辺 |
| 卸売物価(前週発表分) | 最終需要の財価格が2.6%上昇。2009年12月開始の統計で最速 |
| ゴールドマンの2027年予測 | 一戸建て着工87万5000件、中古販売390万件(2019年比で26%少ない) |
なぜ重要なのか・市場への影響
通常、住宅市場が弱ければ中央銀行は利下げで下支えを検討します。しかし今回はインフレの再燃が先行しています。前週の卸売物価では、最終需要の財価格が2.6%上昇し、統計開始以来の最速でした。FRB当局者は、人工知能(AI)関連の投資拡大が半導体や電子機器の価格を押し上げている点に注目しています。同時に、AI投資の恩恵が住宅のような弱い分野を相殺し得るとも考えており、住宅の不振だけで政策を動かす姿勢にはなりにくい状況です。
市場では今後数か月の追加利上げが想定されています。政策金利が上がれば住宅ローン金利はさらに上昇し、買いやすさを一段と損ないます。住宅ローンは長期金利に連動するため、利上げ観測は米10年債利回りを押し上げ、ドルの支援材料になります。
もう一つの論点は「ロックイン効果」です。ゴールドマンの分析では、借り手の95%超が現在より低い金利で借りており、65%は2ポイント以上低い金利です。低金利で借りた持ち主は売却して高金利で買い替える動機がなく、物件が市場に出にくくなります。結果として取引が減り、価格は下がりにくいまま買いにくさだけが残ります。ゴールドマンは住宅投資が今後3四半期でそれぞれ2.5%、4%、1%減少すると予想しており、金利が下がらなければさらに大きな落ち込みもあり得るとしています。住宅は建設、家具、家電、金融まで裾野が広く、GDPや消費への波及にも目配りが必要です。
通貨ペア・市場別の見方
- ドル円:利上げ観測が続けば日米金利差が意識され、ドル買い圧力が残りやすい局面です。ただし住宅や景気の悪化が目立てば、長期金利が低下してドル売りに傾くシナリオもあります。日本側の介入警戒感が強まる水準では上値が重くなる点にも注意が必要です。
- ユーロドル:米金利の上振れはドル高要因ですが、ECBの政策姿勢との相対で動きます。米景気減速懸念が強まれば反発余地もあり、方向感は米長期金利の動き次第です。
- 米株(S&P500など):高い住宅ローン金利は景気敏感株や住宅関連株の重しです。一方、AI関連の投資拡大が下支えになる可能性があり、業種間で明暗が分かれやすいでしょう。
- 金(ゴールド):実質金利の上昇は逆風ですが、景気減速とインフレの併存(スタグフレーション懸念)は支援材料にもなり、材料が拮抗しやすい状況です。
いずれも前提はFRBが引き締め姿勢を維持することです。予想を覆す指標が出た場合は、方向感が急に変わる点に注意してください。
今後の注目点
- 次回FOMCの結果と声明、議長の記者会見での住宅・インフレへの言及
- 9月分CPI(消費者物価指数)、特に住居費(家賃)の動き
- 中古住宅販売件数と新築住宅販売件数、住宅建設業者の景況感指数
- 30年固定の住宅ローン金利と米10年債利回りの推移
- 雇用統計:雇用と所得が住宅需要を支えられるかの確認
- AI関連投資による物価押し上げの程度と、FRB当局者の発言
よくある質問
Q1. 住宅市場が悪化すればFRBは利下げに転じますか?
すぐに転じる可能性は高くないとみられます。住宅は弱い一方で、卸売物価が統計開始以来の伸びを示すなどインフレ圧力が根強く、物価の抑制が優先されているためです。ただし、景気全体の悪化が明確になれば判断が変わる余地はあります。
Q2. 住宅の悪化は為替にどう影響しますか?
利上げ観測が続く間は、金利上昇を通じてドルが支えられやすくなります。ただし景気後退懸念が強まると長期金利が下がり、ドル売りに傾く場合もあります。住宅指標単独ではなく、物価や雇用との組み合わせで判断することが大切です。
Q3. ロックイン効果とは何ですか?
低い金利で住宅ローンを組んだ人が、売却して高い金利で買い替えるのを避け、持ち家を手放さなくなる現象です。物件が市場に出回らず取引が減るため、価格は下がりにくいのに販売は低迷します。ゴールドマンは、この影響で2027年の中古販売が低水準にとどまるとみています。
出典: CNBC Economy(海外発の公開情報を編集部が翻訳・解説)
※本記事は海外の公開情報をもとにマネチャ編集部が翻訳・要約・解説したものです。特定の取引や投資を推奨するものではなく、投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。相場・経済情勢は常に変動し、情報が後に修正される場合があります。