米労働統計局が10月2日(金)に発表した9月の雇用統計で、非農業部門の雇用者数は前月比2万9000人増にとどまり、市場予想の8万4000人増を大きく下回りました。失業率も4.2%へ上昇しています。利上げ局面にあるFRB(米連邦準備制度理事会)にとっては、10月会合での追加利上げをさらに遠ざける材料です。株価先物は上昇し、米長期金利は低下しました。ただし物価の高止まりは続いており、12月の利上げ観測は残っています。

何が起きたのか

9月の米雇用者数(季節調整済み)は前月比2万9000人の増加でした。ダウ・ジョーンズがまとめたエコノミスト予想は8万4000人増で、失業率の予想は4.1%でした。結果は雇用の伸びが予想の3分の1程度、失業率は予想より0.1ポイント高い4.2%です。

過去分の修正も弱い内容でした。8月は13万3000人増へ下方修正され、7月は増加から1万人減少へ転じています。2か月分の修正を合計すると、従来の発表より6万人少なくなりました。

業種別では、医療が1万7000人増で最大の押し上げ役でした。建設が1万1000人増、製造業が9000人増です。一方で、政府部門が1万7000人減、人材派遣サービスが1万1000人減、情報サービスが1万人減、金融が7000人減でした。情報サービスの減少については、人工知能(AI)が雇用に与える影響への警戒感も背景にあるとされています。

賃金の伸びは鈍化しました。平均時給は前月比0.1%増(予想0.3%増)、前年同月比3.0%増(予想3.1%増)で、前年比は2021年5月以来の低い伸びです。週平均労働時間は34.6時間で変わりませんでした。

家計調査(失業率の算出に使う調査)は事業所調査(雇用者数の算出に使う調査)より良好でした。就業者数は40万6000人増、労働力人口は48万5000人増で、労働参加率は0.2ポイント上昇の61.8%と5月以来の高さです。失業率の上昇は、職探しを再開した人が増えた影響も含みます。また、働きたいのに職がない人やパート就業者まで含む広義の失業率は7.6%へ低下し、2025年1月以来の低水準でした。

要点まとめ

項目 内容
発表日・対象月 2026年10月2日(金)発表、2026年9月分
雇用者数 前月比2万9000人増(予想8万4000人増)
失業率 4.2%(予想4.1%)
過去分の修正 8月は13万3000人増、7月は1万人減。合計で6万人下方修正
平均時給 前月比0.1%増、前年同月比3.0%増(2021年5月以来の低い伸び)
10月会合の据え置き確率 82.8%(CMEグループのフェドウォッチ、10月27〜28日会合分)

なぜ重要なのか・市場への影響

FRBは9月に0.25ポイントの利上げを実施しました。当局者の多くは、雇用よりもインフレを大きな脅威とみています。FRBが重視する物価指標では、コアの前年比が直近で3%と、目標の2%を上回ったままです。

そのため、これまで労働市場の底堅さは利上げを続けやすい土台でした。今回、雇用の伸びが鈍り失業率が上がったことで、10月の追加利上げの可能性はほぼ消えたと受け止められています。ジェフリーズのチーフ米国エコノミストは、10月利上げにとって今回の数字は「とどめ」になると述べました。市場は次の利上げを12月まで見送ると織り込み始めています。

市場の反応は素早いものでした。株価先物は急伸し、米国債利回りは今世紀初頭以来の高水準まで上昇していた直後だけに、大きく低下しています。悪い雇用統計が株高につながったのは、「景気の失速」よりも「利上げ圧力の後退」が好感されたためです。

注意点もあります。労働市場の弱さは、解雇が急増しているというより、企業が採用を絞っている「低採用・低解雇」の姿です。週次の新規失業保険申請件数は低く、解雇の指標も4年ぶりの低水準とされています。また、経済成長自体は強いとされています。賃金の伸び鈍化は物価には追い風ですが、ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオンのチーフエコノミストは、賃金上昇率がインフレに食われていると指摘しました。同氏は労働市場を「安定」とみており、12月の利上げは妨げられないと考えています。

通貨ペア・市場別の見方

  • ドル円:米金利の低下はドル売り・円買い要因です。ただし12月利上げの可能性が残るため、一方向の急落とは限りません。米10年債利回りの低下幅と、日米金利差の動きを合わせて確認します。
  • ユーロドル:米金利低下はドル安・ユーロ高要因です。ただし欧州側の経済指標が弱ければ上値は限られます。ドル指数の反応も併せて見ると判断しやすくなります。
  • 米株(S&P500、ナスダック):利上げ観測の後退は追い風です。一方、景気減速が鮮明になれば企業業績への懸念が出るため、金利低下の恩恵と景気不安のどちらが勝つかが焦点です。
  • 金(ゴールド):実質金利の低下は支えになります。ドル安と金利低下が続くかが手掛かりです。

いずれも前提は「12月利上げの確度が今後のデータでどう変わるか」です。発表直後は値動きが荒くなりやすいため、レバレッジやロット管理には余裕を持たせてください。

今後の注目点

  • 10月27〜28日のFOMC(連邦公開市場委員会):据え置きの確認と、声明や会見での12月に関する示唆
  • FRB高官の発言:雇用の弱さを重くみるか、インフレ警戒を優先するか
  • 10月発表予定の消費者物価指数(CPI)と、FRBが重視する物価指標:コア物価が3%付近から下がるか
  • 週次の新規失業保険申請件数:低水準が続くか、解雇の増加が見え始めるか
  • 次回の雇用統計:9月の弱さが一時的か、8月の反発が例外だったかの判断材料
  • 米10年債利回りの水準:今世紀初頭以来の高水準から低下を続けるか

よくある質問

Q1. 雇用が弱いのに、なぜ株価は上がったのですか?

利上げが遠のくとの見方が広がったためです。利上げは企業の借入コストを高め株価の重しになるため、金利低下は株式にとって追い風になります。ただし景気悪化が深まれば、この関係は逆転することもあります。

Q2. 失業率が上がったのは、悪い話だけですか?

一概にそうとは言えません。労働参加率が61.8%へ上昇しており、職探しを始めた人が増えた影響も含まれます。広義の失業率は7.6%と2025年1月以来の低さで、内容は強弱が混在しています。

Q3. 12月の利上げはなくなったのでしょうか?

なくなったとは言えません。市場は12月まで利上げを見送ると織り込んでいますが、物価は目標を上回ったままです。今後の物価・雇用データ次第で見方は変わるため、指標ごとに確認が必要です。

出典: CNBC Economy(海外発の公開情報を編集部が翻訳・解説)

※本記事は海外の公開情報をもとにマネチャ編集部が翻訳・要約・解説したものです。特定の取引や投資を推奨するものではなく、投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。相場・経済情勢は常に変動し、情報が後に修正される場合があります。